予防


”怪我の症状や痛みを単に抑えるための安易な治療では、隠れた原因や欠点が放置されたまま、結果として確実に怪我は再発し、他の怪我を誘発させます”


トレーナーとクライアント


- 信頼関係

怪我からの復帰にあたって、トレーナーとクライアント(ダンサー)というのはある意味、信頼関係が大切となります。そしてトレーナー側から見て、信頼できるダンサーかどうかは怪我に対する態度でわかります。いいダンサーは、自分の怪我からできるだけ早く、効率よく復帰するためには、迅速かつ適切な診断と処置が欠かせないことを知っています。さもないと痛みが残り、いつまでも調子が悪く、ストレスが溜まり、結局ダンス活動から長く離れざるを得なくなります。

- 最高の予防策

非常に残念なのは、ダンサーの中には怪我(スポーツ障害)を”舞台活動の一部”くらいにしか考えていない人がいることです。これでは信頼も保証もできません。怪我を再発させ、その人のダンサー生命を破滅させることに一役買うことなどできないからです。”怪我をしない身体の獲得”、これこそ最高の予防策なのだということを是非認識していただきたいものです。”無事これ名馬”ということです。

オーバーワークを避ける


数多いスポーツ損傷のリスクファクター(危険因子)の中でも、ダンサーの皆さんに最も避けていただきたいのは稽古のしすぎ(オーバーワーク)でしょう。これは何も稽古時間の問題だけではなく、例えばバレエの場合、コールドからソリストへ、ソリストから真中へとポジションが移ると、リハーサルの際、体への負担と頻度は気付かないうちに上がります。必然的に筋肉や関節、腱などに影響があり、気がついたときには痛めていたということになりかねません。そういった場合、最初から張り切りすぎず持続時間、頻度、強度のバランスを取りながら(これは諸先生方にも是非意識していただきたい)徐々にペースを上げていくようにしましょう。

ウォーミングアップとクールダウンの徹底


筋、腱、じん帯が冷えて硬くなっている状態は損傷が非常に起こりやすいものです。ダンスの最中、通常の捻りやストレッチ、ターンなどで切れる危険にさらされます。十分なウォーミングアップで血流量を増加させて組織を暖め、さらにストレッチによってよく伸ばせば、関節や腱の使い過ぎ損傷を免れる確率が高まります。

的確な技術の獲得


これは非常に重要なポイントです。微妙に重心のかかり方が違っていたり、踏み切りや着地時の無頓着な動作は関節や腱、じん帯などに不必要に負担をかけ、技術が癖になっている分、損傷の再発につながりやすい。たとえ熟練したプロのダンサーといえども、常に技術の改善とチェックは心がけたい(疲労が蓄積されてきた場合にも同じ事が起こります)。