応急処置



ダンサーが直面するほとんどの損傷は、突然の事故よりもむしろ使いすぎ(あるいは体力不足)がもともとの原因であることがほとんどです。しかし、痛みあるいは違和感を覚えていても、深刻に受け止めず、ドクターの治療が必要になるまでに事態を悪化させがちなのも事実です。損傷を効果的にカバーする方法は、”初期治療”つまり損傷したら直ちに適切なファーストエイドを行うことです。


応急処置の基本 -R.I.C.E.-


-Rest (安静)
-Ice (冷却)
-Compression (圧迫)
-Elevation (挙上)



現在のスポーツ医学では、まず冷やすということが基本です。RICE処置は、受傷したら、あるいは症状が出たらただちに行うことが非常に大切です。損傷した場所を冷やすことで、腫脹、出血、痛み、炎症を軽減させます。より効果をあげるためには、受傷後10分~15分以内に冷却できれば、その後の回復にかかる期間を数日~数週間短縮できると言われています。


なぜ冷やすの?


怪我をしてすぐにアイシングを行うと、受傷個所の代謝レベルを下げ、損傷した細胞の酸素の必要量を下げることができます。そして周囲の酸素必要量も減らすことができますから、損傷個所の周りの細胞が破壊されることを防ぐことができるからです。
つまり、こうして損傷の悪化を最小限に止めておかないと、完治するまでの時間が数倍かかってしまうのです。




どうやって冷やすの?


冷却(アイシング)の道具に関しては、氷をビニール袋に入れたり、市販のアイスパック(稽古場の冷蔵庫に入れておくのには便利)を使用したりとさまざまです。できるだけ患部の深部まで冷やす必要のあるアイシングの一番の難点は、途中で止めたくなるほど冷たいということです。アイシングすると、初めは、

冷たい→燃えるような感覚→さらなる痛み→痛みに慣れる→無感覚

という、”感覚のプロセス”を乗り越える必要があります。
残念ながら、この過程の途中でアイシングを止めてしまうと、十分な効果を得ることが難しくなります(もちろん何もしないよりマシです)。ただこれだけは言えます。”今痛みをこらえて冷やして数日で復帰するか、止めて数週間症状を引きずり悪化させるか”選ぶのはダンサー個人ということです。




冷やす時間と温度の目安は?


時間

冷やす時間は受傷部位によって差がありますが、10分~20分を目安にしましょう。例え5分でも、前に述べた”感覚のプロセス”を経過したと思ったら、一度取り外してみましょう(間違っても、冷やしたまま眠ってしまったりしないように注意しましょう)。


温度

温度もまた損傷の種類で微妙に違いますが、凍傷を避けるため0度以上に設定したいものです(日本の冷蔵庫で作る氷の温度は基本的にかなり低いようですので、注意して行いましょう)。市販のアイシング用パックの場合はくれぐれも凍ったままで使用せず、外に出して柔らかくしてから使いましょう。また、皮膚に直接当てず、先に湿らせた薄めの布を(乾いていては熱伝導を阻害します)当てるか、オイルを塗って行うほうが安全です。


上記に注意したにもかかわらず、万が一凍傷になった場合、すぐに市販の軟膏を塗って安静にします。早ければ翌日、遅くても2、3日で症状は治まります。症状が悪化するようであれば、ドクターの診察を受けてください。




どれくらい続けるの?


初期治療は24-72時間実施

2~3日は無理せず安静に、ということです。
どんなひどい損傷でも72時間もあれば、症状は沈静化して、悪化することがないという医科学的判断に基づくものです。原則として、先に述べた”感覚のプロセス”を1時間感覚で1日2~3回は行います。